コラム(本紙 「小窓」より)

宅急便は2度ベルを鳴らす

 マンションのゴミ置き場で異変が起きている。減少傾向をたどる新聞や雑誌などの置き場は年々小さくなり、段ボールの置き場が増えているのだ。これは言わずと知れたネット通販の影響だ。段ボールのほとんどがリサイクルされていると知っていてもこんなに大量に捨てられて大丈夫なのかといらぬ心配をしてしまう。しかも配達された商品はその段ボールの半分以下の大きさのものも多い。これを無駄とは言わないのか?

 一方昼間の道路を見渡せば宅急便や郵便局の車が入れ替わり立ち代わり路上に駐車している。さらに生協やネットスーパーなどの車がその合間を縫ってやってくる。軽自動車が多いとはいえこんなに配達の車が走っていてガソリンは大丈夫なのか、とこちらもいらぬ心配したくなる。ガソリンが安いのがせめてもの救いか。時間指定しても不在が多いため、配達員の口癖は「どうせ居ないんだから」だと言う。都内では夜7時、共働きの夫婦が自宅に戻り家の灯りが付き始めると彼らは再びやってくる。宅急便のお兄さんは1日に2度やってくる。

 夜間の高速道路のサービスエリアも、通販の商品を積載した長距離トラックでひしめき合っている。彼らは0時を過ぎると割引料金になるのでそれまで仮眠をとる。届けても不在のことが多い時間指定に間に合わせるために、彼らは一斉に動き出す。皮肉な状況である。

 ネット通販の市場はすでに12兆円を突破したという。私たちは重いから、安いから、送料無料だから≠ニいう理由で歯ブラシからシステムキッチンに至るまで通販を利用して購入する。しかしその裏側で大きな社会的な不和が生じていることも確かである。便利で安い≠フ裏側には、辛くてきつい℃d事が待っており、無駄で非効率≠ネシステムが存在することが多い。解消の方法として郵便局やコンビニの店頭で受け取れるシステムも始まったが、まだそのほとんどがテスト段階だ。
 現在、ドローンを使用して高層マンションの高層階にベランダから商品を配達する計画も検討されていると言う。ドローンが一日に2回やってくる日も遠くない。


 米井一高@nihombashi 2016/0308



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