コラム(本紙 「小窓」より)

■先輩の力を借りる

 ソニーやシャープ、あるいはリクルート、セブン-イレブン等、企業を引退したOBが他業界の中小企業や地方自治体で再び働き始めている。彼らは現役時代に培った知識やノウハウを基に新しいPBブランドを開発し、町おこしや村おこしなどの地方創生に一役買っている。

 日本ロジスティクスシステム協会の賀詞交歓会におけるセミナーで、大阪市に本社を置く物流システム企業「ダイフク」の北條正樹社長は以下のように語った。
 「今後新しい物流システムを作るには、個々の企業が単独で行うのではなく、関連団体の手を借りる他、官庁、大学などと共同・連携して作り上げることが肝要。IoTやAI、ロボット技術など、未知の分野に対応するには個々の力では限界がある」と。当然、中小企業においても単独で未経験の分野にチャレンジするには相当なコストと労力がかかる。だから他企業の熟練者の力を借り、企業同士が連携することが重要ということだろう。

 経産省関東経済産業局では、信用金庫などの地域金融機関と共同で、売上や利益改善などの課題を抱える中小企業と企業を退職した経験が豊富なOBとのマッチング交流会を実施している。平成26年度は23回開催し、今までに延べ約1500名のOBと400社を超える企業のマッチングが行われ、250組以上の支援が成立した。顧客の本業を支援することで信用金庫も融資拡大などに繋がっているという。

 
当然、経験豊かなOBにも中小企業との順応性や、自分の働いていた会社と新しい会社の立場の違いを理解した上で業務を進めることができる能力などが求められる。また中小企業などの求める側にも熟練者のノウハウを手っ取り早く借りたい≠ニいう都合の良い姿勢ではなく、いつまでに、何をどのようにしたいのかを説明する力であったり、話し合う力が求められるという。 

 英語で先輩はマイ・シニア、後輩はマイ・ジュニアという。現在、労働人口が減る中、我々の事業をいち早くカイゼンしてくれるのは、移民ではなく、元気なシニア=先輩なのかもしれない。

 米井一高@nihombashi 2016/0205



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