コラム(本紙 「小窓」より)

紙屋が紙を紙屋から買う

 冷蔵庫が壊れたので近所の電気店に行ったら、手頃な価格の冷蔵庫がない。やはり大手量販店に行くしかないか、と考えあぐねていたら、店主が「だったらうちがヤマダ電機で買ってきて、お客さんに売ってあげる」という。

  コスモス・ベリーズ(名古屋市)という会社がある。地方や郊外の電気店がこの会社の会員になると、ヤマダ電機の商品をそのままの価格で仕入れることができる。入会金10万円、月会費は1万円。これによりヤマダ電機は自社の販売網が届かないエリアで販売でき、地方の電気店は商売に繋がり、顧客も廉価で家電が購入できる、という三方よしのシステムだ。

 食品の世界にも同じようなものがある。「コストコフェア」がそれだ。元は地方のスーパーの店主がセールの目玉がないかと考えついた歳時企画だが、コストコというアメリカ生まれの大手量販にしかないビッグサイズの食品を買いにいき、2割の利益を乗せて自店で転売したら飛ぶように売れた、というものだ。コストコは現在、全国の23カ所で展開されているが、まだ北陸地方や四国地方には出店していない。コストコに買い物に行く機会がない人にとっては絶好の歳時企画というわけだ。

 元来、メーカーは購入した原材料を加工し、バリュー(価値)を付加して商品を問屋、特約店に販売した。製紙の世界で言えば、商品企画→チップ調達→パルプ生産→製紙→流通、という所謂バリュー・チェーンである。しかし市場がシュリンクし問屋や小売りがその機能を失いつつある現在、仕入れや販売の現場では販売店同士、あるいは消費者同士の結びつきが強くなり、かつての川上・川下という考え方が崩壊しつつある。浅草橋の問屋街などで目にした「小売りはお断り」の看板も過去のものになりつつある。

 現在、ヤフーオークションを覗くと、数多くの「袋」が販売されているのがわかる。フレコンバッグにいたっては、新品から中古にいたるまで470点が販売されている。中でも「中古フレコンバック一回使用のみ1枚250円」は圧巻だ。どのような流通変化が起きようともやはり我々に問われるのは品質という信頼ではなかろうか。

 米井一高@nihombashi 2016/0403



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