コラム(本紙 「小窓」より)

■新規vs継続客

 現在、通信販売は物販で約9兆円産業になろうとしている。アマゾン、楽天などのEコマースを始め、テレビ、新聞、雑誌など様々な場所で通販の企業がしのぎを削っている。背景にはインターネットの発達、高齢化などが上げられるが、書籍から音楽、介護用品、弁当、旅行、いまでは墓石までが自宅に居ながら購入できる。物流、梱包資材等を含めればもはや巨大産業だ。

 これら通信販売は『今なら初回限定で○○円』という謳い文句が特徴だ。通販企業にとっては多少利益を削ってでも新規客を常に獲得することが重要だからだ。初回申し込み客の氏名、年齢、住所などのリストを整備し計画的にダイレクトメールを送り、リピート(継続)客へ成長させていくのが彼らの戦略だ。

 新規客と既存客の割合はおおまかに3:7程度である。もちろん商材、業種によっても違うが、常に7割程度の既存客を回転させながら、注文しなくなり脱落していく顧客をカバーするために3割の新規客獲得に動く。そのサイクルを繰り返し、企業は成長していく。
新規、既存をコストの観点でみるとどうだろう。たとえば、通販のみならず一般の店舗でも新規客の開拓には既存客の維持の5倍以上のコストがかかると言われている。新規客を開拓するためにチラシなどのセールスツールを作ったり、値下げで目玉商品を作ったりと販売促進費がかかるが、一度継続客になってもらえれば、そこまでコストをかけずとも顧客自らが店舗に訪れてくれるということだ。これは通信販売でもスーパーでも飲食店でも同様なことが言える。

 企業は常に新規獲得と継続を繰り返す。現在のように社会が高齢化し、業界がシュリンクしてパイが広がらなくなった場合、既存客をとの関係を継続していかに利益を出すか、これも重要な考え方だ。しかし既存市場は必ず小さくなる。商品や設備は時代に流され時間をかけて陳腐化する。よって常に新しい顧客、新しい商品を開拓するために投資をしていかねばならない。これはBtoCもBtoBも同様だ。継続客は力であり、新規客はそれ以上に未来に繋がる。


20150903 米井一高(Ikko Yonei) @nihombashi


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