コラム(本紙 「小窓」より)

■価格を転嫁させるということ


 2015年年初、明治HDは飼料価格やエネルギーコストの高騰等により生乳取引価格及び商品価格を引き上げた。またその後、チョコレートの主原料であるカカオ豆やナッツ類などの原料価格が高騰したため、菓子などの容量を小さくし価格を上げた。
 例えば「きのこの山」は従来容量 82gから74gと9・8%の減量、「バナナチョコ」は42gから37gと 11.9%の減量となった。価格面では「明治ブルガリアヨーグルトLB81プレーン 450g」が250円から260円に。「アーモンドチョコ」は200円 220円と10.0%の価格アップとなった。

 現在明治HDはどうなっているか。原材料のコストは107億円上昇したが商品の値上げ効果は148億円となったという。菓子などの販売量も落ちていない、株価も9850円(12月4日現在)と高値をキープしている。

 しかし現実として体力や価格交渉力もある大企業と比較すると中小企業の価格転嫁は厳しい。 経済産業省の調査では、一般に原材料高騰で約9割の企業で収益減などの影響が生じると分析している。うち4割の企業では価格転嫁が全くできず、下請に位置する程転嫁が難しい可能性がある、と報じている。

 価格転嫁を実現させるためには何が必要なのか。ひとつはタイミングであろう。リーマンショック後や震災後などの景気低迷時には到底値上げは難しい。現在のように株価や経済が比較的安定しているように見える時期がひとつのタイミングと言える。
もう一点は価格転嫁しようとする企業の「理解者」の数だ。

 2年前、軽油が高騰しトラック運送事業者の多くが倒産の危機に追い込まれた。運賃に軽油価格上昇分の価格が転嫁できなかったためだ。公益社団法人全日本トラック協会調べでは運賃に価格転嫁できていない企業≠ェ9割あるとしていた。

 一方、一部でも価格転嫁できた運送事業者の5割は「荷主・元請に理解がある場合、価格転嫁に応じてもらえた」と答えている。さらになぜ理解してもらえたかの問いにアンケートの中では「日頃から安全運転を心掛けたり品質向上、環境配慮などの企業活動を徹底しているから、元請に理解を得られた」と記載されている。

2015・1210 米井 一高  (IkkoYonei) @nihombashi


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